あらすじ
定年退職を迎えて半年。
毎日が日曜の暇を持て余す昭夫(あきお)は、妻の冷たい視線から逃れるように、蝉の声が響くアスファルトへと足を踏み出した。
社会の歯車から外れ、自分の輪郭さえ曖昧になっていたある日、行き止まりの裏路地でボサボサの三毛猫・ミケと出会う。なんとその猫、平然と人間の言葉を話し、挙句の果てに「風が当たらなくて暖かい日向ぼっこスポットを知らない?」と図々しく要求してくるのだった。
それからというもの、ミケを筆頭に、メタボなキジトラや気まぐれな老猫など、次々と厄介な野良どもが昭夫の前に現れては、それぞれの勝手な悩みを持ち込んでくる。現役時代のようにいかない、思い通りにならない猫たちの世界。しかし、不器用で気ままな日々を過ごすうちに、社会から切り捨てられたような昭夫の心の澱(おり)は、少しずつ溶けていき――。
これは、定年退職した不器用なおじさんと、喋る野良猫たちが織りなす、ちょっと切なく温かい、人生の再生の物語。