あらすじ
事故で両親を失い、自身も右脚に後遺症を負った15歳の少女、鳴海奏。
U15女子サッカー日本代表で背番号10を背負った司令塔は、利き足の左と戦術眼は健在なのに、長く走り続けることも、全力で切り返すこともできない。
旧知の藤宮家に引き取られた奏を待っていたのは、奏と同い年、同じ家にいながら目も合わせない双子の姉妹、玲奈と日向だった。
慎重で正確な玲奈。考えるより先に走る日向。
学校の女子サッカー部への入部を断られても選手を諦めきれない。
そんな奏が見つけたのは、ゴールキーパーなし、交代なし、一試合わずか三分の三人制フットボールとその女子大会「トリニティ・カップ」。
通常ゴールは一点。股抜きから直接決めれば二点。二点先取で勝利。三分で同点なら、両チーム敗退。
「三分間なら、今の身体でも戦えるかもしれない」
奏は仲の悪い双子へ告げる。
「三人で、サッカーをしよう」
チーム名は、TRIPLETTA。
最初の練習試合は、わずか四十八秒で零対二。奏は昔の自分には戻れず、玲奈と日向は同じ方向さえ向けない。
それでも三人は、一点を三つの仕事へ分けていく。
玲奈が相手の道を消し、日向が走って奪い、奏が一触でつなぐ。
痛みを隠さない。失敗も勝敗も、一人だけに背負わせない。
三分間を終え、最初の一点を取り、三人で勝つために。
これは、失ったものを元どおりにする物語ではない。
今の身体と、今の関係から、新しい勝ち方と新しい家族をつくる、少女たちの青春フットボール物語。
※作中に登場する3on3 footballのルールは基本的に実際のものに沿っていますが、大会の内容や描写はこの作品用に書いたフィクションになります。