あらすじ
工場をクビになった十九歳の三城逢馬は、バイクで自分探しの旅に出ようとしていた。
そんな夜、アパートの駐輪場で、泥まみれになって倒れている女性――システィールを拾う。
彼女が持っていたのは、世界を守ることも、滅ぼすこともできる変身デバイス。
行く宛てがなく、何者かに追われているというシスティを放っておけなかった逢馬は、彼女をバイクの後ろに乗せ、当てもない逃避行へと走り出す。
やがて逢馬は、表世界《コンクリート》と並行して存在する、モノクロの半次元世界《アブストラクト》へ足を踏み入れる。
人間の負の感情から生まれる心影《ファントム》。
それを討つ変身戦士、境面ダイバー。
研究所から逃げ出した、七人の魔法少女。
心影を操り、世界へ復讐しようとする者。
そして、失われた恋人の心を再現するため、人間そのものを材料にしようとする研究者。
誰もが自分なりの正しさを掲げ、誰かを守るために誰かを傷つけていく。
作られた心は、偽物なのか。
生まれた理由と、その後に重ねた選択のどちらが、その人間を決めるのか。
ヒーローになるつもりなどなかった青年と、自分を道具だと思っている女性の旅は、やがて世界の境界と、人の心の在り方を巡る戦いへ変わっていく。
これは、世界を救う英雄の物語ではない。
目の前にいる誰かを見捨てないという選択を、最後まで積み重ねる者たちの物語。