あらすじ

ゾンビに支配された終末世界。 生き残った高校生・相良隼人は、誰も見捨てられない優しさで仲間たちを導いていた。 一ノ瀬優花里もまた、助かった人より先に、助からなかった人のことを忘れられない少女だった。 そんな二人を、群れの外側から見つめる一体のゾンビがいる。 立花悟。 喋ることのできないその怪物は、人間だった頃の自我だけをわずかに残していた。 そして本能で知っている。 人間を“意思をもって食べれば”、自分の中に残った最後の人間性は崩れるのだと。 だから彼は食べない。 飢えに焼かれながら、誰にも知られないまま、人間たちが食われていくのを見ているだけのはずだった。 だが、隼人たちが何度も死地に追い込まれる中で、悟はついに介入してしまう。 群れの流れを逸らし、見えないところで命を拾い、表の物語から零れ落ちた死を見届ける。 その行動は人間たちには偶然にしか見えない。 ただ一人、優花里だけが気づき始める。 何度も現れるあの一体のゾンビは、何かが違うのではないかと。 拠点崩壊の夜、優花里が群れの中で孤立した時、悟は彼女を食える距離まで近づきながら、それでも噛まなかった。 代わりに群れの前へ立ち、逃げ道を作る。 喋れない。 名乗れない。 人間には見分けてもらえない。 それでも最後まで人間を食べないことで、自分を人間の側につなぎとめようとする怪物の物語。 これは、表の主人公が進むゾンビサバイバルの裏側で、 誰にも知られず命を守り続けた“もう一人の主人公”の記録である。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/01
  • 現在の作品ぼくは人間を食べない