あらすじ
アルヴェール王国の元王太子ルシアンは、明日の正午、王都の広場で処刑される。
罪状は、聖女候補アイリスに心を奪われ、十年来の婚約者である公爵令嬢セレスティアへ無実の罪を着せ、大勢の貴族の前で婚約破棄を言い渡したこと。
民衆が知る物語の中で、ルシアンは愚かな王太子だった。
そしてセレスティアは、身分の低い少女に婚約者を奪われながらも、自らの潔白を証明し、悪人たちを断罪した悲劇の令嬢。新たな王太子に望まれ、幸福を手にした彼女を、人々は「真実を貫いた令嬢」と称賛した。
だが、ルシアンだけは知っている。
セレスティアは無実ではない。
アイリスを陥れたのも、証拠を偽造したのも、ルシアンに婚約破棄を言わせたのも、すべて彼女が仕組んだことだった。
正義を信じる王子の性格も、民衆が望む物語も、味方たちの弱みも、彼女は十年をかけて利用した。
悪役令嬢は断罪されたのではない。
自分を断罪した王子から、主人公の座を奪ったのだ。
これは処刑を待つ元王太子が語る、誰からも愛される令嬢の、本当の物語。