あらすじ
東京の下町に佇む古物商『時洲堂』。
そこに一人で暮らす二十歳の店主・時洲美波の朝は、近所で金物工房を営む三枝夫婦が運んでくる食事から始まる。
そんな穏やかな日常を送る彼女の元に、古物界の生ける伝説・神谷宗珠から一通の招待状が届いた。
それは、山奥の湖畔に建つクラシックホテル『ホテル・クロノス』で開催される、選ばれた者だけのシークレット・オークションにて、出品物の真贋を見極めよという依頼だった。
美しくも重厚な白亜のホテルには、富と名誉に執着する、およそ30人の曲者たちが集結していた。
大富豪や不動産王、新進気鋭の鑑定士、古物インフルエンサーなどその顔触れは多種多様である。
美波が極上のフレンチディナーを堪能した晩餐の最中、突如としてホテルへ続く唯一の吊り橋が崩落する。
さらに猛吹雪によって通信網も切断され、洋館は完全なる陸の孤島と化した。
優雅な夜は一転、見えざる悪意が潜む逃げ場のない密室へと姿を変える。
果たして美波は、無事に日常へと帰還することができるのか——。