あらすじ
行列のできる人気ラーメン店を一代で築いたオーナーシェフ、神谷蓮司。
味に妥協できない彼は、仕入れから仕込み、調理、接客、経営まで何もかも一人で抱え込み、ある日の深夜、厨房で倒れて命を落としてしまう。
次に蓮司が目を覚ましたのは、剣と魔法、そして凶悪な魔物が存在する異世界の森だった。
勇者でも賢者でもない彼に与えられた職業は、聞いたこともない《麺聖》。
しかもこの世界では、魔物の肉は毒と魔力に汚染された危険物として捨てられており、誰も食材として利用していなかった。
だが、蓮司にとって魔物は恐怖の対象ではない。
白角鹿の骨からは澄んだ塩スープを、岩亀の肉からはとろけるチャーシューを、巨大クラーケンからは濃厚な魚介出汁を、そして火竜の骨と脂からは灼熱の味噌ラーメンを作ることができる、未知の食材の宝庫だった。
「世界を救えと言われても困る。俺は、まだ誰も食べたことのない究極の一杯を作りたいだけだ」
魔物を最も美味しい状態で仕留めるため、包丁一本で危険地帯へ乗り込む蓮司。
その料理は、味覚を失った竜人騎士を救い、空腹に苦しむ貧民街の子供たちを笑顔にし、傷ついた冒険者たちへ再び立ち上がる力を与えていく。
やがて小さな屋台には、獣人、ドワーフ、聖女、王族、さらには魔族までもが行列を作るようになり、蓮司自身も勇者や魔王すら恐れる「世界最強の料理人」と呼ばれ始める。
これは、前世では店のために人生を使い切った一人の料理人が、異世界の仲間たちと共に店を育て、魔物を狩り、世界中の客の腹と心を満たしながら、本当の意味での究極のラーメンを追い求める物語。
ただし本日狩る予定の火竜について、本人はこう語っている。
「討伐じゃない。仕入れだ」