あらすじ

介護施設で働く「私」は、認知症の田辺さんに、亡くなった夫がまだ生きているかのような嘘をついている。 「ご主人は、今日は遅くなるそうですよ」 「ちゃんと食べて待っていてほしいと言っていましたよ」 そう伝えれば、田辺さんは安心し、食事や入浴にも応じてくれる。真実を話して何度も悲しませるより、穏やかに過ごしてもらうための嘘のほうが優しい。私はそう信じていた。 しかし、田辺さんが自分の言葉を疑いなく信じる姿に触れるたび、心の中に小さな罪悪感が積み重なっていく。 そしてある日、私は田辺さんに、夫がすでに亡くなっているという真実を伝えてしまう。 相手を傷つけないための嘘と、相手を欺かないための真実。どちらを選んでも、誰かを傷つけてしまうとしたら――。 介護の現場を舞台に、言葉は誰のためにあるのかを静かに問いかける物語。

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小説を読もう2026/08/01
  • 現在の作品嘘と真実のはざま