あらすじ
黒崎レンのスキルは【写し身】。効果は「見たものを記録する」だけ。攻撃も防御もできず、配信映えもしない――そう判断され、彼は花形パーティー「黎明の剣」で三年間、荷物持ちと囮役を押しつけられてきた。
そしてある日、リーダー・剣崎グレンの無謀な単独突撃が招いた全滅寸前の危機を、レンは静かにやり過ごし仲間を救う。だがグレンは生配信のカメラの前で、その手柄を自分のものとし、レンを「臆病者」「足手まとい」と罵って独りダンジョンに置き去りにした。
理不尽な追放。しかし置き去りにされた最深部で、レンは規格外の魔物と対峙し、動けば死ぬ、逃げれば喰われるという状況の中で、目を逸らさず見続けるという狂気じみた選択をする。その代償に体は軋み、意識は薄れかけるが――【写し身】が、初めて牙を剥く。
命からがら生還した深夜、彼は誰に見せるでもなく「生きてます」とだけ伝えるためソロ配信を始める。だが画面の端に映り込んだものに、視聴者はざわめき始めていた。
無自覚の男が、無自覚のまま火をつける。下剋上の幕が上がる。