あらすじ
幼い頃から「人を観察する」ことに異常なまでの才能を持つ三浦悠斗は、自分が他人とはどこか違うという違和感を抱えながら生きてきた。父は心理学者、母や弟もそれぞれ歪んだ価値観を抱える家庭で育ち、悠斗は人の感情を理解するのではなく、その行動や思考を分析する癖を身につけていく。ある日、不可解な連続死亡事件の調査に関わる中で、自身が幼少期に存在した心理研究施設「白凪心理ケアセンター」で違法な心理実験を受けていたことを知る。しかし記憶を失っていたのは父ではなく、自ら耐えきれない真実から逃れるためだった。恋人・真奈や刑事・相馬との関わりを通じ、悠斗は「人を理解しようとすることが、ときに相手を支配してしまう」という事実と向き合い、他者を救うことよりも、その人の意思を尊重することの大切さを知る。それでも裁判中、刃物を持った人物から真奈を守ろうとした悠斗は、「自分だけが最善の判断を下せる」という傲慢さから相手を殺害してしまう。自らの選択によって罪を犯したことを受け入れた悠斗は終身刑となる。刑務所での日々の中、彼は初めて他人を分析することをやめ、「理解すること」と「寄り添うこと」は違うのだと悟る。人を観察し続けた男が、最後に一人の人間として世界を見つめ直すまでを描く、サイコホラー・心理ミステリー。