あらすじ
とある夜のこと。一人の男が鼻歌交じりに街を歩いていた。
男は上司に同行して遠方の取引先との商談に臨んでいた。日中の交渉は終始順調に進み、当初想定していた条件も滞りなくまとまり、最終的には無事に契約を取り付けることができた。
仕事を終えた解放感からか、上司は笑いながら男の尻を軽く叩き、『帰る前に思う存分羽根を伸ばしてきていいぞ』と言った。自分はホテルでゆっくり休むという。男はありがたくその言葉に甘え、一人で夜の街へ繰り出したのだった。
繁華街は色とりどりのネオンの光で満ちあふれ、通りの両脇には胸元や脚を惜しげもなく露出した女たちが等間隔に立ち、通行人へ笑顔を向けていた。なんともいい眺めである。酒場から漏れる賑やかな笑い声や客引きの呼び声が絶え間なく交錯し、甘ったるい香水や酒、焼き鳥の匂いなどが夜風に溶け合って漂ってきて、歩いているだけで頬が緩む。女から声をかけられるたび、男はほいほい近寄り、調子よく話に乗った。
あっちの店に入っては鼻の下を伸ばし、こっちの店に入っては目を細めて女たちの胸元を覗き込む。そんな調子で渡り歩いているうちに酒もずいぶん回り、今自分がどの通りを歩いているのかさえ、すっかりわからなくなってしまった。
「さあて、困ったなあ」