あらすじ
昭和二十二年、敗戦の傷跡が残る東京。世間では人気作家と持て囃される男は、酒と借金と嘘にまみれた自堕落な日々を送っていた。
男の傍らには、対照的な二人の女性がいる。「死にたくなったらおいで」と男の破滅を包み込む愛人の律子。そして、幼い娘を育てながら、夫の欠落を静かに受け入れて家を守る妻の幸恵。
愛人の家で夜を明かした男は、朝、何事もなかったかのように妻の待つ家へと帰る。暖かな味噌汁と妻の静かな微笑みに身を苛まれながら、出された金を受け取って再び青空の広がる街へ消えていく。
平和な世界に馴染めず、人間になりきれない男が、二人の女の愛と歪みの狭間でしぶとく生きていく無頼の物語。