あらすじ
終業式の日、郷土研究部の唯一の部員である本田なつきは、二学期までに部員が増えなければ廃部になると顧問から告げられる。新入部員が見つからないまま迎えた夏休み、焦りを抱える中、商店街で転校予定の男子・川辺と出会い、思わず部活見学に誘う。後日部室を訪れた川辺は淡々とした態度ながらも興味を示し、なつきが進める「沼の言い伝え」の調査に協力することになる。
二人は町の人々への聞き込みや図書館での資料調査を重ね、沼を三周すると告白が成功するというジンクスと、七周の別の意味が人によって異なることに気づく。調査を進めるうち、かつて沼の周囲で若者たちが縁談のために集まり歩く「沼廻之儀」という行事が存在し、三周と七周はその過程の段階を示していた可能性に辿り着く。行事の消失後、言葉だけが残り、長い年月の中で意味が変容したのだと結論づける。
共に過ごす時間の中で、なつきは次第に川辺を意識するようになり、川辺もまた調査に積極的に関わるようになっていく。夏休みの終盤、二人は実地調査として沼を三周する。夕暮れの中、歩みを重ねた先で川辺は想いを告げ、なつきもそれに応える。言い伝えの形をなぞるように、二人の関係は静かに結ばれる。
夏休み最終日、なつきは調査をレポートにまとめ、文化祭展示への道筋をつける。二学期初日、川辺は正式に入部し、廃部の危機は去る。かつての縁談行事の名残であるジンクスを自分たちの形でなぞったことに、なつきは不思議な実感を覚えながら、これからの活動と川辺との時間に新たな期待を抱くのだった。