あらすじ
「ファテミオ様、お願いしても良いですか?」
「ヴィーチェ、貴女なら育てる事も可能でしょうに。何故私に?」
ヴィーチェは横に居た1人の荷物持ちに目配せをし、布に包まれた品を取り出させて私に見せた。
指輪型印章、意匠を含んだマント、国章か何かの描かれた木片?
「こちらは?」
「商隊がこの子を拾った際に見つけた物よ。調べてみたけど、全く分からなかったの。この私でも一切分からないなんて、おかしいでしょ?」
ヴィーチェの知識は塔の記録にすら匹敵するでしょうし、それに一切関わりのない物であるというのは . . .
確かに、考えられない物ではありますが、私に頼む理由にはなりませんね。
「理由を述べなさい。今の話は、私に頼む事と関係がないです」
「この子は連れるのに幼過ぎる。私達商隊は同じ所に留まって居られない。でも、ファテミオ様ならこの子が育つまで面倒を見てあげられる。これで良いかしら?」
私が男手ひとつでこの子を育てられると?
信頼と言えば聞こえは良いですが、難しい話ですね。
そもそも、教会から目をつけられてますし、余り目立った事はしたくありません。
「やはり難しいですね。私の手には余ります」
「この辺りでこの子を安心して預けられるのはファテミオ様だけなの。お願いします、お父様の顔に免じて引き受けて下さい」
そう言われましてもね。
いえ、そういえば昔、子供に関して指摘された様な?
印章と意匠は記憶に無いですが、国章は示された気がしますね。
「少し待って貰えますか?確認したい事がありますので」
「分かりました。何日後に伺えば良いですか?」
「そこまで掛かりませんよ。すぐ戻りますから」
確か、あの本に挟んだ気がしますね。
いえ、図はもう一つに入れたような。
この辺りですかね?あぁ、ありました。この図、よく似ていますね。
つまり、あの約束を守る時という事ですか?
「待たせましたね、ヴィーチェ。その子を引き取りましょう。そちらの品も構いませんか?」
「本当に良いんですか?難色を示していたのに」
「ある方との約束を思い出しましたので。その子を引き取ってくれと」
やっと、あの日の意味が分かりましたよ。
貴方達に言われたのはこの事だったと。
確か、イルリーナ。それが私の育てる子の名でしたね?
貴女との15年越しの約束は果たしますよ。