あらすじ

⽿に⼼地よい、サラサラという川のせせらぎが聞こえる。 ゆっくりと目を覚ますと、そこは⾒たこともないほど美しい河原だった。 「……う、頭が……。俺はたしか、トラックに……」 テンプレ通りの記憶を反芻しながら上体を起こす。 その瞬間、俺の視界に⾶び込んできたのは、息をのむような絶景だった。 「あ、目が覚めたみたい。可愛い男の⼦」 「本当。ねえ、こっちへいらっしゃいよ」 着物やドレスを艶めかしく着崩した、信じられないほどの美⼥、美⼥、美⼥。 ⾊とりどりの美⼥たちが、妖艶な笑みを浮かべて俺を囲んでいる。 誰もがモデル以上のプロポーションで、⽢い⾹りが⿐腔をくすぐった。 (き、来たぁぁぁぁぁーーーーーーっ︕︕︕) 俺の⼼臓は歓喜で爆発しそうだった。 間違いない。トラック、河原、そして美⼥の群れ。 これぞネット⼩説で浴びるほど読んだ、神様からもらえるボーナスステージ。選ばれし者の特権、異世界ハーレム転⽣だ︕ 俺は勝ち組の余裕を顔に浮かべ、⽴ち上がった。 まずは⾃分の最強スペックを確認し、この美姫たちにドヤ顔を披露してやる。 さあ、いくぞ。せーの。 「――『ステータス、オープン︕』」 ビシッと⼈差し指を天に突き出し、満⾯の笑みで叫んだ。 ……しかし、目の前には半透明のウィンドウなど⼀枚も現れない。 「……あれ︖ す、すてーたす、おーぷん︖」 もう⼀度、少し声を低くして格好良く⾔ってみる。沈黙。風の⾳。 困惑する俺の後ろから、呆れたような、ひどく冷ややかな⼤⼈の⼥性の声が響いた。 俺が怯えながら尋ねると、彼⼥はふぅと深いため息をつき、妖しく微笑んだ。 「神様︖ 寝ぼけないで。私はここ――『衆合地獄(しゅごうじごく)・美⼈エリア』の獄卒⻑(ごくそつちょう)よ。あんたら現世で⾊欲に溺れて犯罪紛いのことしたから、死んでここに落ちてきたの。ここは異世界じゃなくて、ただの地獄。ハーレムに⾒える︖ 残念、全員あんたをなぶり殺しにする刑罰⽤の亡者(モンスター)よ」 獄卒⻑がパチンと指を鳴らす。 すると、さっきまで⽢い声をあげていた美⼥たちの顔が、⼀瞬で⽪膚の裂けた化け物へと変貌し、鋭い⽖を剥き出しにした。 「ひ、ひえっ……︕︖」 「何がステータス、オープンよ。」 獄卒⻑が苦笑しながら鉄槌を振り上げる。俺の、絶対に勝てない「地獄の⽇常」が幕を開けた。

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小説を読もう2026/07/31
  • 現在の作品地獄界 羅夢