あらすじ
「アリシア、貴様の聖女の力は偽物だ! 婚約は破棄する!」
大聖堂で第二王子から突然の婚約破棄を告げられた聖女アリシア。その瞬間、彼女は前世の記憶を取り戻した。日本で霧よけ登山ガイド兼、鈴細工職人をしていた鈴宮すず──遭難者を助けた帰りに崖から落ちて死んだ、二十七歳の私。
実は聖女判定の水晶が反応しなかったのは、アリシアの魔力が大きすぎて飽和していたから。七年間、毎朝こっそり銀の鈴を鳴らし、王都全体に聖域結界を張り続けてきた真の功労者は、他ならぬ彼女自身だった。
「かしこまりました。聖女、辞めさせていただきます」
弁明も命乞いもせず、あっさりと聖女の座を降りたアリシア。彼女が去れば、この国は霧の魔物に呑まれる。でも──まあ、知らないふり。
目指すは、誰も踏破できぬ伝説の“霧深き迷いの森”。前世で培った“霧を読む”感覚と、鈴を鳴らして道を開くギフト【鈴音結界】を武器に、彼女は自由な暮らしを求めて森の奥へと進んでいく。
そんな彼女が霧の小径で拾ったのは、小さなもふもふ。しかしその正体は、数百年を生きる国宝級の竜だった──!
威厳ある竜のくせに、少し離れただけで拗ねて甘える恋の芽と一緒に。魔物避けの鈴を作り、迷い人を助け、シチューを食べる、なんでもないけれど愛おしい日々。
ざまぁの爽快感と、もふもふとのほのぼのスローライフをあなたに。チリン──今日も、霧の森に澄んだ銀の鈴が鳴る。