あらすじ
「聖女セラフィナ、貴様との婚約を破棄する!」
精霊祭の前夜祭。王太子アルベルトから婚約破棄を突きつけられた聖女セラフィナは、内心こう思っていた。
(え、婚約破棄? むしろご褒美では?)
彼女には前世の記憶があった。日本の製薬会社で過労死した研究職・佐倉澪。ブラック労働の犠牲者だった彼女の信条はただ一つ――『搾取される場所からは、即撤退』。
「地味に薬を煮ていただけ」と侮られたその薬こそ、王国全土の結界を五年間支えてきた要だとも知らずに、王太子は真の聖女だという女を選んだ。ならば遠慮はいらない。セラフィナは結界維持契約の解除書類にサインを残し、迷わず王国を捨てた。
辿り着いたのは辺境の街レーヴェン。そこで出会ったのは、強面だけれど不器用に優しい狼獣人のギルドマスター・ガルド。「働いた分だけ、ちゃんと返す。それが筋だ」――その言葉に、干からびていた心が満たされていく。
ホワイトな職場、正当な評価、そして焦げたシチュー。前世から数十年、初めて知る「愛を注げる場所」。
やがて彼女は、一夜だけ咲く精霊花を用いた最強ポーションの秘密に迫っていく。彼女を追い出した王国が滅びの危機に瀕する一方、その才能と人柄を求める声は、国を越えて広がっていって――。
婚約破棄はゴールじゃない。本当に大切な居場所を見つける、痛快スローライフ・ファンタジー開幕!