あらすじ
市の間口の割りを十年、わたくしが割ってまいりました。ところが旦那様は間口札を取り上げて仰るのです——「間口は稼ぐ順に」。愛人筋の小間物見世の名が、うちより先に読まれる。三度目でようやく承知いたしました。では割付帳から、わたくしの名を外させていただきます。
生鮮は日の当たらぬ北側でないと昼までに傷む。飴は子どもの通る辻の角。重い荷は荷車の入る三番。見栄で表を欲しがる見世は売り上げが二番でも五番に置く——それを数えていたのは、わたくしの頭の中だけ。割付帳に残るのは割った結果で、割った理由ではございません。
書いてある通りに割った翌の市に、客の通らない表と、売れ残る荷ができました。わたくしは何も止めておりません。ただ、市の老女がひとこと仰っただけ。「うちらはあの見世に立ってたんじゃない。あんたの割りに立ってたんだ」。
——座株の停まったお見世に、札は残してまいりました。