あらすじ
2025年、夏。ウェブデザイナーの斎藤真理は、ある復讐計画を胸に秘め、半年前から東京の滝野川団地に住んでいた。物語は、隣人である相田勇の孤独死で幕を開ける。几帳面な彼が最後に残した乱雑なゴミ袋は、真理が周到に仕掛けた復讐劇の、静かな合図だった。
彼女はまず、団地の秩序の番人を自任する自治会長・鈴木茂に接近。「相田が亡くなる前、隣人の佐藤健吾と口論していたようだ」と、あくまで「気のせいかもしれない」という体で嘘の種を蒔く。鈴木という格好の媒介者を得た噂は、井戸端会議などを通じてたちまち増幅し、「佐藤が金銭トラブルで相田を脅していた」という悪意ある「事実」へと変貌。佐藤は団地内で急速に孤立していく。さらに真理は、捜査で訪れた刑事にまで善良な市民を装って巧妙に佐藤への疑いを植え付け、私的な噂を公的な疑惑へと昇華させた。
次に真理は、精神的に追い詰められた佐藤本人と直接対峙。彼らしか知り得ない過去のキーワードで揺さぶりをかけ、「相田の日記が見つかった」という決定的な嘘で彼の心を打ち砕く。
真理の動機は、四十年前、相田と佐藤に裏切られ命を絶った祖父の復讐にあった。研究者だった祖父は、同僚の彼らがそれぞれの家族を守るという「弱さ」から不正の罪を被せられたことで絶望したのだ。法で裁かれなかったその罪を、真理は決して許さなかった。
クライマックスは、異様な熱気に包まれた住民集会。ここで真理は、偽造した「相田の日記の最後の一ページ」を涙ながらに読み上げ、住人たちの手によって佐藤を社会的に抹殺する。
全てを終え、団地を去る日、真理はこの手記がミステリーではなく復讐の記録であることを読者に告白する。自分は嘘の証拠を提示しただけであり、それに踊らされて佐藤を裁いた住人たち、そしてこの物語を信じた「読者」もまた共犯者なのだと突きつける。復讐を遂げた彼女は、涙一つ見せず、冬の気配が満ちる街へと静かに姿を消すのだった。
第24回 内田康夫ミステリー落選作品 供養をこめて。
ミステリーど素人なのでアドバイスくれると喜びます。
お願いします。