あらすじ
国境戦争から戻った兵士エーミルは、夜に叫ぶという理由で「悪魔憑き」と呼ばれ、王都郊外の収容棟に閉じ込められていた。
除霊判定は三度とも陰性。それでも王国は、三十日間一度も叫ばないこと、家族が全責任を負うこと、元の仕事へ完全復帰することを帰還の条件にしている。
前世が精神保健福祉士だった下級官吏イリスは、戦場で何があったのかを無理に聞く代わりに、白い紙を一枚差し出した。
「ここを出たあと、どこで朝を迎えたいですか」
住まい、短時間の仕事、医官、姉との無理のない距離、苦しい夜の連絡先。
治癒魔法だけでは整えられなかった暮らしをつないだ二人は、「二度と困らない保証」を求める帰還審査会へ臨む。
これは、症状が消えたから帰れるようになる物語ではない。
困る夜があっても、自分の鍵で次の朝を迎えられるようになる物語だ。