あらすじ

「離縁したい」 旦那様がそう言ったとき、わたくしはその人の靴の踵を見ていた。 右の踵が、外へ二分。左が、内へ一分半。三月前に測ったときは、逆だった。 別の階段を、別の速さで、毎晩降りている。そういう減り方だった。 六年間、わたくしはヴェルデン侯爵家の全員の足を測り、木型を彫ってきた。 夫の。義父の。義母の。義妹の。ぜんぶ、無署名で。 だから出ていくとき、一つだけお願いした。 「木型はお返しいただけますか。あれは、わたくしの道具ですので」 お義父様は「木の塊だろう」と笑って、許してくださった。 ——その週末が、夏の舞踏会だった。 どの靴店の台帳にも、ヴェルデン家の足は存在しない。 合わない靴では、人は踊れない。立っていることも、できない。 わたくしは何もしていない。ただ道具を持って実家に帰り、 母の工房で、次のお客様の足を測っているだけ。 声を荒らげたことのない女が、捨てた家の足元から崩していく話。 第1部 全26話・完結予定/ハッピーエンド。 静かなスカッとと、手に職のあるヒロインがお好きな方へ。

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小説を読もう2026/07/31
  • 現在の作品離婚されたら、侯爵家の誰も靴が履けなくなりました