あらすじ
魔王が討伐されて、四年。
女神に請われ、この世界に「専門家」として呼び出された臨床心理士の私——早瀬涼子。
私に与えられた仕事は、王都に設けられた「傾聴の間」で、戦いを終えた英雄たちの心に耳を傾けることだった。
この王国において、「心の弱さを語ること」は恥であり、禁忌だ。
なぜなら、語られなかった苦痛と沈黙こそが、この国の国防を支える不可視の力となっているから。
「助けを求めていい」
そう他人に差し出す言葉の裏で、私自身もまた、決して言えない傷を抱えていた。
囚われた先代勇者、語ることを許されない傷痕、そして沈黙を強いられる社会。
心の傷を治すことなどできるのか。あるいは——治すことだけが救いなのか。
静かな対話の果てに、私が見つけた「強さ」の答えとは。