あらすじ
あらすじ
「詠唱が遅い。それだけの理由で、お前は要らない」
宮廷魔導院を"無能"の烙印付きで追放された魔導師サイラス・ヴェイン。だが真実は逆だった。彼は誰よりも遅いのではない――誰よりも深く、世界の裏側に刻まれた"真名"を視ていただけだ。
丸暗記の詠唱式でしか戦えないテンプレ魔導師たちには、決して届かない敵がいる。名を持たぬ怪異、秩序から外れた異形――そういうものだけが、サイラスの前に姿を現す。
相棒は、影の中から現れる灰色の霊獣グリザイユ。三百年を生きる皮肉屋で、口は悪いが、契約は主従ではなく対等。雨の街道に取り残された魔導師と獣は、誰かの物差しで測られない場所を探して歩き出す。
これは、追放された"無能"が実力を証明する物語――であると同時に、証明そのものに興味がない男の、静かな旅の記録である。