あらすじ
ようこそ、電波研究部へ。
一九九二年、私立東浄高等学校。理科準備室のいちばん奥にある、部員が数えるほどしかいないさびれた部活です。やっているのはアマチュア無線。無線機のマイクを握って、顔も知らない誰かと、声だけで話す趣味です。
入ってみて分かったのですが、この部、変な人ばかりなんです。
部長の滝沢先輩は声が高くて、電波の上ではしょっちゅう女の人に間違われます。でも訂正しません。同級生の久保田さんはほとんど喋らないのに、はんだ付けだけは部でいちばん上手です。顧問の相原先生は無線機の調整が神がかっているのに、なぜか一度もマイクを持ちません。
そして滝沢先輩には、もっと変なところがありました。
毎晩八時になると、決まった周波数で、決まった相手と、決まった言葉だけを交わすのです。
「今日は、三番でした」
「窓は、開いていましたか」
「空は、なに色でしたか」
三番って何ですか。窓って何ですか。
名前も言いません。住んでいる場所も言いません。五分で終わります。それを、三年間、毎晩です。
暗号だ、と僕は思いました。
僕がその意味を知るまでに、一年かかりました。
そして知ったとき、僕は先輩に礼を言えませんでした。かわりに、屋上で怒りました。
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全18話+序章、完結済みです。約5万6千字なので、二時間ほどで読み終わります。
前半はのんびりした部活の話です。後半は、たぶん泣きます。
誰も死にません。最後は明るく終わりますので、そこは安心してお読みください。
アマチュア無線の言葉には、出てきたその場で短い説明を付けてあります。予備知識はまったくいりません。当時と今で決まりが違うところは、いくつかの話の終わりに作者から補足を入れました。読み飛ばしていただいてもかまいません。