あらすじ
学校では目立たないモブ。
成績も運動神経も平凡以下。友達もいない。
そんな高校一年生の朝倉 啓人には、誰にも言えないもう一つの顔がある。
それは、登録者数五十万人を抱える有名Vチューバーのアストレイということ。
主にゲーム配信と雑談配信を行い、ゲームの実力と冷静な語り口で人気を集めるアストレイは、ある日の配信で、偶然読んだネット小説を絶賛する。
するとその作品は瞬く間に注目を集め、書籍化へと話が進んでいく。
やがてアストレイの元に、その作者から「帯コメントを書いてほしい」という依頼が舞い込んできて、それを引き受けた。
高校の部室からアストレイとして作者とオンラインで打ち合わせをすることになってしまった朝倉は、そこで思わぬ事実を知る。
画面の向こうにいた原作者は、一目ぼれをして入部した文芸部の先輩の白石 栞だったのだ。
しかし、白石は、アストレイに対して感謝ではなく、怒りと恨みをぶつける。
「自由に書いていただけなのに、あなたのせいで期待されるようになった」
「もう、自分の書きたいものが書けなくなった」
アストレイの善意の紹介は、彼女から創作の自由を奪っていた。
さらに打ち合わせ中に流れた校内放送でアストレイの正体が同じ高校にいるとばれ、宣言される。
「必ず探し出して、復讐してやる」
正体を知られれば、平和な学園生活すべてが崩れる。
朝倉はアストレイであることを隠したまま、ぎこちない学園生活を続けることになる。
そんな中、朝倉は気晴らしに立ち寄ったゲームセンターで、フードを深くかぶった少女と対戦をする。
その少女はオンライン対戦で何度もぶつかってきたライバルのNull(ヌル)だった。
二人は対戦を重ね、ゲームを通して自然と距離を縮めていく。
しかし朝倉は気づいていない。
その少女が、クラスで誰もが一目置く陽キャギャルの橘 陽菜だということに。
橘は、対戦中の声や癖から、朝倉が憧れのアストレイだと気づいてしまう。
だが彼女にも事情があった。
陰キャだった過去を隠し、必死に作り上げたギャルの自分と、ゲームの前でだけ素直でいられる本当の自分が、同一人物だとは知られたくない。
こうして三人は、それぞれ異なる理由で「本当の顔」を隠しながら、同じ学園で、同じ部活で、交錯していく。
――正体を知られたくないVチューバー。
――正体を暴きたい物書き。
――正体を知っているが、別の正体を隠したいギャル。
誰かに知られることは、救いなのか。
それとも破滅の合図なのか。
嘘と本音がすれ違う中で、三人はまだ、自分が何を守ろうとしているのかさえ、わかっていない。