あらすじ
火災現場で錠前を壊し、見知らぬ子どもを逃がして死んだ鍵屋・甲斐透。
目を覚ますと、俺は掌に乗るほど小さな魔物――錆色の〈鍵トカゲ〉になっていた。
尻尾は鍵の形。
どんな錠前も読み、開くための〈鍵紋〉を作れる。
ただし、新しい種類の封鎖を開くたび、前世の記憶が一つ永久に閉じる。
住所。
仕事場への道。
母の声。
自分の顔。
最初に俺を拾ったのは、声を奪う首輪をつけられた少女ミレルだった。
『開けたあと、お前は何をする』
そう尋ねる俺に、彼女は石床へ指で書いた。
――自分の名前を、声に出して言う。
少女を牢から逃がし、封じられた水門を開き、石にされた職人を救い、行き場のない種族を迎えていく。
だが、この世界で錠前は支配そのものだった。
道も、魔法も、季節さえ、聖錠教会が「守るため」と称して閉じている。
ならば作ろう。
鍵を一人が独占せず、内側から誰でも開けられる町を。
閉じ込めるための扉が一枚もない国を。
これは、人を自由にするほど自分を忘れていく小さな魔物と、
その名を代わりに覚える仲間たちが、世界の七つの錠を開くまでの物語。