あらすじ
作品紹介:
学校一の美少女、九條鈴音。
彼女の周りにいるだけで、人は安心し、楽しくなり、いつの間にか彼女を好きになる。
クラスメイトたちは同じ瞬間に笑い、同じ相手へ怒り、鈴音を守るためなら事実さえ無視する。
誰も、その異常に気づかない。
ただ一人、久世尚弥を除いて。
他人の意見に流されず、どんな空気にも染まらない尚弥は、鈴音の影響をまったく受けなかった。
鈴音にとって尚弥は、自分を特別扱いしない初めての男子。
尚弥にとって鈴音は、笑顔の裏側がまるで読めない、少し気になる少女。
二人が近づくにつれ、学園では奇妙な現象が広がり始める。
そろう笑い声。
伝染する感情。
一つの意思のように動く生徒たち。
そして、鈴音を見張る謎の機関。
やがて尚弥は知る。
人々を鈴音へ引き寄せているものは、単なる人気や好意ではない。
鈴音の脳から放たれる信号が、周囲の人間の感情と神経を「同期」させているのだ。
だが、尚弥だけは同期しない。
なぜ自分だけが、彼女の影響を受けないのか。
なぜ鈴音は、月を見ることを恐れているのか。
そして彼女を「月へ帰す」ために動き始めた者たちは、いったい何者なのか。
世界中が鈴音に同調しても、尚弥だけは自分の意思を失わない。
けれど――鈴音を守りたいという、この気持ちさえ本物なのだろうか。
これは、世界に愛されてしまう少女と、世界から孤立している少年が、自分の感情を選び取る物語。
月から来たかぐや姫は、地上で初めて恋を知る。
主な登場人物:
久世尚弥 くぜ・なおや
西条学園に通う高校二年生、十七歳。
常に冷静で、他人の意見や集団の空気に流されない少年。周囲からは「空気が読めない」「何を考えているか分からない」と言われているが、実際には空気を理解したうえで従わないだけである。
表面上は無口で淡々としているが、内心では意外と饒舌。美少女を前にすれば年相応に動揺し、それを理屈で押さえ込もうとする。
鈴音の同期能力が通用しない、唯一の人間。
九條鈴音 くじょう・すずね
尚弥と同じクラスに通う、学校一の美少女。
成績優秀で品行方正。誰にでも優しく、教師からも生徒からも好かれている。
しかし、彼女の周囲では人々の感情や行動が不自然なほど一致する。鈴音本人も、自分を庇おうとする人々の反応が過剰になることに気づいているが、その理由は知らない。
誰からも好かれる鈴音にとって、自分を特別扱いしない尚弥は初めて出会う存在。
なぜか月を見ようとしない。
この作品について:
現代の進学校を舞台に、集団心理、神経同期、恋愛感情の正体を描く学園SFファンタジーです。
「みんなが正しいと言うことは、本当に正しいのか」
「誰かを好きになる気持ちは、自分自身が選んだものなのか」
「周囲の影響を受けないことは、強さなのか。それとも孤独なのか」
世界に流されない少年と、世界を無意識に支配してしまう少女。
正反対の二人の恋を通して、「自分の感情は誰のものか」を問いかけます。