あらすじ
比嘉陸は、何者にもなれない。看護師を目指す幼なじみの美月にも、歴史の教師になりたい親友の翔太にも、進むべき道がある。けれど陸だけは、進路希望の紙の名前欄さえ、埋められずにいた。
三人がいつも集まるのは、隣に住む「おじい」の家。庭には、家よりも古いガジュマルの大樹が、深い影を落としている。
夏の、雷雨の夜。その幹に触れた瞬間、三人は光に呑まれた。
目を覚ますと、そこは昭和二十年の沖縄だった。島を焼く艦砲。いつ帰れるのかも、帰れるのかさえ、わからない。
逃げ惑う日々のなかで、三人は、この時代を懸命に生きる人たちと出会う。その一人ひとりとの時間が、何者でもなかった陸を変えていく。守りたいもののために、生まれて初めて、本気になる。
やがて訪れる、別れの時。三人はそれぞれ、自分の進む道を選び取る。
――ガジュマルの下で、君を待つ。
この物語は、八十年前の沖縄と、今を生きる十七歳たちが出会う話です。戦争の物語であり、友情の物語であり、そして——自分にとって大切なものと、どう向き合うかの物語です。時代も立場も違う誰かと出会い、その人のために、生まれて初めて本気になる。失うかもしれないと知りながら、限られた「今」を、彼らがどう生きていくのか。どうか、最後まで見届けてください。
【注意事項】
※この作品はフィクションです。沖縄戦という史実を背景にしていますが、登場する人物・集落・出来事には創作が含まれます。実際にこの地で起きたことへの敬意を込めて書きました。
※戦争・死の描写を含みます。
全31話・毎日21時に更新します。約1か月で完結予定です。