あらすじ

大学1年生の美桜は、矯正装置を外した「喪失感」から怪しげなクリニックを訪問。冷酷な歯科医・桐生に「二度と外せない永久ブラケット」と発音を奪う棘(タングスパー)の装着を自ら懇願してしまう。 特殊セメントと切断不能なワイヤーにより、歯と金属が完全同化。サ行やタ行が言えない「舌足らずな幼児声」となった美桜は、隔週で1万円のメンテナンスを受けなければ「あごの骨が腐り落ちる」という呪いをかけられ、一生搾取される奴隷と化す。絶望に沈む美桜だったが、自らの罪と秘密を丸ごと受け入れてくれた健人と出会い、結婚。娘の莉奈を出産し母となった。 しかし現実は容赦ない。妊娠中のつわりの激痛、日常のあらゆる場面で「大人」「母親」としての言葉と尊厳を剥奪される絶望。それでも莉奈が20歳を迎えた夜、隠し続けてきた口内の金属と過去の過ちを打ち明けると、娘は「私、お母さんの声が一番好き」と優しく抱きしめ、長年の維持費も一緒に背負うと微笑むのだった。 それから数年後。定期通院で桐生のクリニックを訪れた美桜と健人は、待合室で激しく泣きじゃくる20歳の女子大生・結衣と出会う。 結衣は美桜に続く「二番目の生贄」だった。美桜の失敗を警戒した桐生により棘の設置は免れたものの、結衣は自ら望んだ追加オプションによって、口が2センチしか開かず、あごを動かすたびに無機質な機械音が鳴り響く「開口制限」という新たな冷たい檻に閉じ込められていたのだ。 自分で選んだあまりに重い拷問と、一生終わらない搾取に絶望し「死にたい」と泣く結衣。しかし美桜は、冷たい金属の檻を抱えながらも愛する夫と娘とともに力強く生きてきた30年の歩みと笑顔を見せ、優しくハンカチを差し出す。 同じ狂った造物主によって尊厳を破壊された二人の生贄。圧倒的な絶望の渦中で、結衣は美桜の姿に一筋の救いを見出し、自らの人生の秒針を刻み始めるのだった。

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エブリスタ
エブリスタ2026/07/30
  • 現在の作品永久の檻 「死ぬまで、外さないで」