あらすじ
古びた駅の忘れもの預かり所。
祖父である鋼一が亡くなって三ヶ月。
中学生の御影陸は、預かり所の鍵を握りしめ、誰も来ない駅へ向かった。
埃を払い、カウンターに座る。そこに残っていたのは、光を放つ不思議な忘れものたち。その中で、棚の影から現れたのは、白い服を着た少女、名瀬しおり。
表情は乏しく、言葉は淡々としているが、忘れものについてだけは驚くほど詳しい。
「わたしは、あなたの忘れものをお預かりしています」
忘れものとは、無意識に封じ込めた大切な感情が、形を成したもの——。
陸がそれに触れると、温もりや声、匂いや記憶の欠片が流れ込んでくる。
しおりと共に持ち主を探し、そっと手渡すたび、誰かの心に色が戻っていく。
泣けない陸。
感情を持たないように見えるしおり。
二人で過ごす放課後の預かり所には、次々と忘れものが届く。
万華鏡、コンパス、てるてる坊主、目覚まし時計……。
それぞれに、子どもたちの切ない「忘れたもの」が宿っていた。笑いあり、温かさあり、時には胸が締めつけられるような悲しさもあり。
しおりの不思議な言葉に、陸は何度も吹き出し、
返却が成功するたび、ほんの少しずつ心が軽くなっていく。忘れたものは、取り戻すべきか。
それとも、忘れたままでもいいのか——。
静かな駅に響く、忘れものと人々の物語。