あらすじ

ダンジョンから出る遺物には「銘」が宿る。 品名と効果を語る表銘は、資格持ちの鑑定士なら誰でも読める。だが銘には続きがある――発動条件、代償、制約。世にいう「呪い」の正体、遺物の但し書きだ。 その裏銘まで読める「全文読み」は、現役ではただ一人。大手競売商ミダス商会の鑑定士・折口誠一(四十一歳)である。 ところが誠一は、目玉出品の名剣に「この剣は持ち主を殺します」と鑑定書を書いて、クビになった。正直すぎたのだ。 退職一時金の一部として押し付けられたのは、現金ではなく、倉庫一杯の売れ残り呪物・三百十七点。処分費を惜しんだ会社の、厄介払いである。 クビの翌日の四月一日、誠一は倉庫の隅にカメラを立て、実演販売の丁寧語で配信を始めた。 「さて本日の呪物です。絶対に嘘をつけなくなる仮面。着けて説明いたします。……ええ、ですから全部本当です」 淡々と欠点を読み上げるほど、視聴者は爆笑し、注文が入る。 褒め言葉が微妙に具体的な鎧。敵より先に土下座する魔剣。目的地に必ず遠回りで着く靴。 呪いとは、用途を間違えた性能である――そして四十一歳の誠一自身が、業界で一番の「訳あり在庫」だった。 やがて例の名剣が闇に流れ、「最強の呪物」を求める連中が店に現れる。 誠一の武器は嘘をつかない口と、実演と、利用規約だけ。今日も低評価レビューに、律儀に返信しながら。

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小説を読もう2026/07/30
  • 現在の作品クビになった四十一歳の鑑定士、呪物専門の通販配信を始める ~「この剣は持ち主を殺します」「返品できますか?」「使用後は無理です」~