あらすじ
音楽の街グランヴェルで「神の申し子」「音楽の神に愛された天才」と称えられる天才少女、ジュリエット・ド・ヴァロア。彼女の奏でるヴァイオリンは完璧な調和を誇るが、そこにはジュリエットという人間の魂は一滴も混ざっていない――自分を「精巧なオルゴール」と冷徹に俯瞰する彼女の前に、ある夜、地獄の底から天を睨みつけるような歪な不協和音が響き渡る。音の主は、路地裏から拾われた文字も読めない孤児の少女、コレットだった。美しいけれど空っぽな天才と、醜いけれどぎっしり中身の詰まった本物。初めて「生きた人間の執念」を聴いたジュリエットの胸に、激しい羨望と渇望の火が灯る。一年後、音楽学院で再会した二人の「すれ違いの査察」が幕を開ける。完璧なはずの天才が、ただ一つの「本物」を求めて狂気を走らせる、歪な天才の独白録。