あらすじ

彼女のSNSには、いつも笑顔があった。 だがスタンプが並ぶ速さと、既読からの空白の長さだけは、噓をつけなかった。 むーちゃんは、数字から人を読む。 そして指先ひとつで、相手の呼吸が変わる瞬間を知っている。 メンズエステのキャストとして働くみゅーの、営業用の「強がり」と、 密室で二人きりのときだけ緩む、あざとい体温。 指が肌をすべるたび、彼女の警戒がわずかに解けていくのを、 彼は逃さなかった。 必要なのは、大きな言葉ではない。 本来渡すべきだった、たった1000円。 その一枚が、彼女の緊張をゆっくりと解き、 仮面の下の、素の呼吸を引き出していく。 近づきすぎた距離、触れる指、 言葉にならないまま重なっていく吐息―― それでも彼は、盤面を急がない。 終わり方を決めずにいることが、 誰かにとっての、始まり方になることがある。 見抜くことと、与えることと、触れること。 その全部を手にした者だけが、最後の盤面を握る。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/07/30
  • 現在の作品この恋の終わり方と初め方