あらすじ
本を読むことだけが取り柄の、地味な女学生・織田春子。
そんな春子に声をかけ、「一番のお友達」になってくれたのは、美しく気品に満ちた令嬢・姉ヶ崎美代子だった。
春子にとって美代子は、何よりも大切な存在だった。
ある日、春子は行きつけの古本屋『佐伯書房』へ美代子を連れていく。
そこには、春子が「先生」と慕う店主・佐伯義和がいた。
古本を読み、先生の書いた小説に感想を言い合う。
そんな穏やかな三人の時間は、やがて美代子の一言によって形を変える。
「私ね、佐伯先生が好きなの」
しかし、佐伯には黒川アヤ子という恋人がいた。
美代子から「二人を別れさせたい」と頼まれた春子は、大切な友人の恋を叶えるため、その手助けをすることを決める。
――美代子が幸せなら、それでいい。
そう思っていたはずだった。
けれど、美代子と佐伯が親しくなっていくほど、春子の胸には説明のつかない感情が膨らんでいく。
一方、生まれながらに多くを与えられてきた美代子もまた、初めて「どうしても手に入らないもの」を前に、少しずつその美しさの内側を歪ませていく。
友情か。
恋か。
それとも、ただの執着か。
これは、「好き」という感情の名を取り違えた者たちが、互いを喰らい尽くすまでの物語。