あらすじ
最高気温三十九度。
八月の宮前町で、八坂神社の祭りが始まった。
昔ながらの神輿を守り続けてきた呉服店主・健吾は、汗と熱気に包まれる夏祭りこそ、町に受け継がれてきた大切な伝統だと信じている。
一方、市民協働課の職員・結衣は、祭りの最中に相次いだ熱中症事故を目の当たりにし、開催時期を十月へ移すべきだと訴える。
「人の命が失われてからでは遅いんです」
「暑さに屈して、祭りの魂まで変えていいのか」
夏を守る者と、未来の安全を求める者。
やがて二人の対立は、町全体を「夏派」と「秋派」に分断していく。
しかし、祭りの歴史を紐解く中で、二人は知ることになる。
この祭りが、ただ古いから残ってきたものではなかったことを。
守るべきなのは、日付なのか。
それとも、人と人が集まり、同じ熱を分かち合うという営みなのか。
そして迎える、町を二分する住民投票。
夏か、秋か。
伝統か、安全か。
正解のない問いを前に、宮前町の人々が下す決断とは――。