あらすじ
終電を逃した人だけが、存在しない駅へたどり着く。
高校二年生の朝倉湊は、最愛の父を亡くして以来、心にぽっかりと空いた穴を抱えながら毎日を過ごしていた。
そんなある雨の夜、電車の中で眠ってしまった湊が目を覚ますと、そこには見覚えのない駅があった。
――彼岸ヶ丘駅。
現世と異界の境目に存在する、地図にも時刻表にも載っていない駅。
そこで湊は、不思議な少女・白石灯と出会う。
「この駅では、失くしたものを探せます」
亡くした人。
忘れてしまった記憶。
伝えられなかった言葉。
そして――もう二度と会えないはずの誰か。
半信半疑のまま駅を歩いていた湊は、そこでありえない人物を目にする。
「……父さん?」
死んだはずの父親が、そこに立っていた。
なぜ父は異界にいるのか。
なぜ湊は、この駅へ導かれたのか。
そして、駅員の少女・灯が隠している秘密とは――。
午前0時。
現世と異界が交わる一時間だけの、不思議な旅が始まる。
これは、失ったものを取り戻すための物語ではない。
失ったものを胸に抱え、それでも明日を生きていくための物語。