あらすじ

「二番で十分だ」——四年、この店の返しを見てきたのはわたくしでございます。 壺は三つ。梅雨には口を覆う布を替え、冬には火の近くへ寄せ、夜ごとに匂いを嗅いで使い始める日を決めます。今日の湿りなら、あと二日。たかが二日、されど二日、汁の角が舌へ出るか、蕎麦の甘みの後ろへ引っ込むか、その境でございます。 書き出せるのは醤油と味醂の割だけで、いつ開けるかは全部わたくしの頭の中に。 左様でございますね。二番で結構でございます。ですからわたくしの手は、もう壺に要りませんわね。壺の蓋を閉じて、いつもの位置へ戻して出てまいりました。持ち出すものはひとつもございません。 十日後、同じ割で合わせた汁の角が、客の舌へ出るようになりました。誰も怒鳴りません。ただ次の月から、常連の下駄が並ばなくなります。 自分の名で返しを立てたわたくしの店へ「戻ってくれ」と立った人へ、あの一句をそのままお返しするお話。

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小説を読もう2026/08/12
  • 現在の作品見限られ四年の返しを取り上げられたので壺の蓋を閉じました。お宅の汁、次の朝から角が立ちます