あらすじ
「聖女シエル、お前との婚約を破棄する。役目は終わった。もう用済みだ」
魔王を封じる大魔法を使い切った翌日、王太子アルフレッドに婚約破棄を告げられた聖女シエル。だが彼女は喚くことも泣くこともなく、ただ淡々と頭を下げた。
――なぜなら、大魔法の代償として、彼女の“存在”そのものが今日、雪が溶けるように世界から消えることを、彼女だけが知っていたから。
前世はブラック企業で過労死した社畜。転生してからも搾取され、功績を横取りされ続けた日々。それでももう、恨み言は言わない。
消える前に、社畜が最後に残したのは――静かで、冷徹な“置き土産”。功績偽造、横領、偽の聖女。すべての証拠を、彼女が消えた瞬間に発動する「時限魔法」で仕込んでいく。
そして、消える場所に選んだ雪の終着駅で、彼女は膝を抱える巨大な影――竜人の騎士と出会う。
忘れられ、消えゆくはずだった聖女。けれど、たった一人だけが、彼女を覚えていてくれるとしたら――?
静かな断罪と、溺愛の物語。忘れられても、消えなかった一つの命の記録が、今、始まる。
「せめて――幸せに、なります」