あらすじ
「俺たちは家族だ。そうだろ、アデル」
夫が滑らせたのは、亡き母から私が相続した屋敷の譲渡証書だった。
半年前は、合鍵だった。
冬には、母の寝室を。
そして今度は、屋敷ごと義妹夫婦へ。
――ええ。家族ですものね。
お望みどおり、すべてお譲りします。
十二年分の修繕年賦も。
庭も暖房も使用人の給金も。
お義母様の終身居住と、その暮らしも。
公証人は条件を一つずつ読み上げた。
支払額の記された別紙も、義妹の夫は手に取り、読まずに戻した。
「必要ない。年賦があることは理解した」
「書面がどうであれ、いざとなれば家族ですもの」
そう笑って、全員が署名した。
支払期日は、明後日。
三日後、義家族は私の家の扉を叩いた。
「二百四十枚だけでいいの。家族でしょう?」
「お断りします」