あらすじ
「次の代からは、竹はよそから買う」——秋の暮れ、寝かせ場で竹を数えているわたしの背中側で、跡取りが仲買にそう話していた。わたしには何も告げられていない。
竹は、伐ってすぐには編めない。湯で油を抜き、二年寝かせる。北向きの藪の竹は肉が厚いので寝かせを三月延ばす。日照りの年の竹は割れるので身竹を薄く剥ぐ。雨続きに伐った竹は油が残るので湯を二度。柱に貼れるのは湯の加減と月数だけで、見立ては全部この頭の中にある。
札は要らないと言われた。柱には手順が貼り出された。承知しました。竹は伐れば手に入ります。では今日から、寝かせ場へは入れません。
鉈を拭いて棚へ戻し、いつもの位置へ揃えて仕事場を出た。壊しも持ち出しもしない。やめるのは、明日のための竹を入れることだけ。
半年、何も起きなかった。籠は出る。跡取りは、ほら変わらん、と言う。
冬。二年物が尽きた朝から、籠の腰が立たなくなった。米屋が試しに提げて首を振り、荷がそのまま返る。誰も怒鳴らない。ただ次の月から、注文が来ない。自分の寝かせ場を持ったわたしの前へ「戻ってくれ」と立った跡取りへ、あの一句をそのまま返す話。