あらすじ

『氷刃荘の密室』作品紹介 「密室を作ったのは、糸一本。壊したのは、四十年の忠義。」 あらすじ 雪深い山中に建つ洋館「氷刃荘」。資産家・九条重蔵の招きで集まったのは、折り合いの悪い娘、金に困った甥、忠実な秘書、かかりつけの医師、そして——面識のない遠縁の青年・如月透だった。 「明日、遺言状の内容を発表する。今のままでは、お前たちの誰も一円も受け取れん」 その夜、季節外れの大雪が山道を封鎖し、館は外界から完全に孤立する。そして翌朝、書斎に閉じこもったまま出てこない重蔵の姿——扉には内側からの閂、窓には内側からの掛け金。誰も出入りできないはずの部屋で、彼は胸を刺されて死んでいた。 犯人はまだ、この館の中にいる。 犯罪心理学を学ぶ透は、唯一の部外者として、非公式に事件の調査を任されることになる。密室の謎、偽装された死亡時刻、それぞれが抱える秘密——雪に閉ざされた三日間の果てに、透が辿り着く真実とは。 これは、精緻な密室トリックの謎解きであると同時に、忠義と裏切り、そして人が誰かを守るためについてしまう噓を描いた、濃密な人間ドラマである。 見どころ 本格クローズドサークル:雪山の館、遺産相続、外部との遮断——ジャンルファンが求める王道の舞台立て フェアプレイの密室トリック:窓と扉、二つの施錠を異なる手法で成立させる、緻密で論理的な仕掛け 奥行きのある人物造形:一見類型的に見える登場人物たちが、それぞれ意外な素顔と弱さを抱えている 主人公・透の背景:事件の裏に、彼自身がまだ向き合えていない過去がそっと重なる 登場人物 如月透(きさらぎ とおる) 23歳 本編の語り手。大学で犯罪心理学を学ぶ青年。氷刃荘の主・九条重蔵とは遠縁にあたるが、面識はなかった。館内で唯一の利害関係のない人物として、非公式に事件の調査を任される。冷静な観察眼の持ち主だが、その根底には、幼い頃に経験したある出来事——今も本人の中で消化しきれていない過去——が横たわっている。 九条重蔵(くじょう じゅうぞう) 氷刃荘の主。九条製薬の創業者にして資産家。気難しく、家族や使用人を試すような言動を好む。心臓に持病を抱えており、月に一度、かかりつけ医の往診を受けていた。事件の発端となる遺言状の内容を発表する直前、何者かに殺害される。 九条葉月(くじょう はづき) 32歳 重蔵の一人娘。冷ややかな美貌の持ち主で、亡き母の遺産分与を巡り、以前から父と折り合いが悪い。事件前夜には父と口論になったことを認めている。突き放すような態度の裏に、誰にも見せない一面を抱えている。 九条克人(くじょう かつと) 45歳 重蔵の甥で、九条製薬の専務。羽振りよく振る舞うが、実際は会社の資金繰りに追われているとの噂がある。豪胆な物言いの奥に、周囲の誰も知らない事情を隠している。 早乙女律子(さおとめ りつこ) 28歳 重蔵の秘書。几帳面な性格で、口述筆記からスケジュール管理まで一手に引き受けている。事件当夜、最後に重蔵と会話をした人物の一人。控えめな物腰の裏に、静かな決意を秘めている。 神代医師(くましろ いし) 60代 重蔵のかかりつけ医。心臓の弱った重蔵のため、月に一度、山中の館まで往診に訪れている。超然とした落ち着きの持ち主。 柏木(かしわぎ) 氷刃荘に長年仕える家令。四十年にわたり九条家に忠実に尽くしてきた、館内で最も屋敷の構造に精通した人物。物静かで、多くを語らない。 舞台設定 長野県北部、人里離れた山中に建つ九条家の別邸「氷刃荘」。三階建ての石造りの洋館で、切り立った崖に面した書斎、外部との連絡手段を絶つ大雪——本格ミステリの舞台として作り込まれた、閉ざされた冬の館。 こんな方におすすめ 論理的に組み立てられた密室トリックをじっくり味わいたい方 謎解きだけでなく、登場人物たちの人間ドラマにも没入したい方 雪山の館を舞台にした、王道のクローズドサークルミステリが好きな方 シリーズ探偵の今後の活躍にも期待したい方

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カクヨム2026/08/12
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