あらすじ
「セレネ・アルディス、貴様との婚約を破棄する。国境の硝子橋を朝露で維持できぬ無能など、王家に不要だ」
王太子のその言葉に、私はただ静かに微笑んだ。
前世は現代日本の橋梁設計士。過労で命を落とし、剣と魔法の世界に転生した私が授かったギフトは【朝露錬成】。地味だと嘲られるその力で、私は前世の構造力学を駆使し、王国唯一の交易路である『硝子の橋』を、たった独りで毎朝維持してきた。
だが誰もその価値を知らない。義妹には「独り占めしてサボっていた」と罵られ、私は婚約破棄と辺境追放を言い渡される。
——いいでしょう。ならば、どうぞご自由に。
あの橋には、私だけが知る仕掛けがある。私の魔力署名を持たぬ者には、決して維持できないという事実を。
蒸発するのは、明日の朝。私がもう、編み直さない朝から。
追放先は橋の向こう、冷酷と噂される竜人将軍の領地。だが将軍ガルドは、私を一目見てこう言った。「あれを毎朝独りで再構築できる者を、無能と呼んで追放しただと?」——彼だけが、私の橋の真の価値を理解していた。
そして現れる、謎の審問官イーヴォ。彼の口にする「こちら側ではない言い回し」。それは、前世を知る者の——。
理解されなかった令嬢が、真に自分を認めてくれる場所で幸せを掴む、痛快転生ファンタジー。橋が消えたとき、王国は自らの過ちを知る。