あらすじ
文芸編集者・綴代朔のもとへ、冬澄透花と名乗る女性が未発表原稿を持ち込んだ。
「この本が出れば、先生は殺されます」
原稿は、人気作家・墨名叙一郎が十年前の女子高校生失踪事件を描いた新作だった。
脅迫状はない。
殺害を企てている人物も、まだいない。
それでも冬澄は言う。
「今はまだ、犯人なんていません。先生が、これから作るんです」
墨名が用意したのは、事件関係者四人へ送る、四種類の原稿。
同じ事件を描きながら、本人に関する数頁だけがそれぞれ異なっている。
事件の仲へ嘘を混ぜ、間違った過去を読ませることで、反論させる。
そして、彼ら自身の口から、本当に隠していた過去を語らせるために。
親友。
弟。
教師。
記者。
誰も、まだ墨名を殺そうとは思っていない。
だが、一冊の原稿をきっかけに、四人は自分を守るため、別の誰かの名前を差し出し始める。
そして、まだ存在しなかったはずの殺人は現実になる。
誰が、いつ「犯人」になったのか。
冬澄はなぜ、それを予測できたのか。
間違った物語が、隠されていた真実を暴いていく。
出版業界を舞台に、
「人は自分の過去を、どこまで都合よく物語にできるのか」を描く心理ミステリ。