あらすじ
「館の紙を裏へ貼って無駄にした。書き損じを溜め込んだ。指示と異なる手順を用いた」——広間の長卓で、伯爵はわたくしの咎めを十一まで数え上げ、本日より綴じ場から外すと申しました。
本は、表紙に貼る上等な紙で決まるのではございません。急かされて乾ききらなかった紙が、どちらへ逃げるか。窓際で乾いた紙は素直で、床近くで一晩過ごした紙は腹に湿りを抱えている。その逃げ足を裏で何枚押さえるか——一枚、三枚、二枚。表だけ見れば、なるほど不揃いの罪人でございます。
四年、その紙を「無駄」と呼ばれてまいりました。左様でございますね。では今日から、わたくしは一枚も裏へ貼りません。
道具は壊しも持ち出しもいたしません。置いてまいります。やめるのは、手を入れることだけ。
冬は一度で足りました。献呈本の背が浮く。頁が開かない。箔押しの家紋だけが、まっすぐのまま笑っております。誰も怒鳴りません。ただ、囃した口が順に閉じてゆきました。
書き損じを一枚だけ持って広間を出たわたくしへ、紙商が尋ねます——「あなたの裏打ちに、うちは月いくらお支払いすればよろしいか」。値を尋ねられたのは、四年で初めてでございました。