あらすじ

二年前、自転車での帰宅中に羽虫の群れ(蚊柱)へ突っ込み、パニックから電柱に激突して鼻骨を折る大ケガを負った「私」そのトラウマから、群れをなして飛ぶ小さな虫を見るだけで鳥肌が立つほどの強い恐怖と嫌悪感を抱くようになっていた。 ある蒸し暑い日の夕方、公園のベンチで蚊柱を忌々しく見つめていた「私」は、突如吹いた強風に包まれ意識を失う。目を覚ますと、視界はモザイク状に割れ、手足は六本に——なんと自らが最も嫌悪していた「一匹の羽虫」へと姿を変えてしまっていた。 困惑する間もなく、本能に引き寄せられるように蚊柱の渦へと巻き込まれていく。その直後、目の前からスマホを見ながら自転車を漕ぐ女性が接近してきた。 自分の過去の事故が重なり全力で警告しようとするも、声は届かず、女性は蚊柱を避けようと急ハンドルを切って落車。 顔を打って血を流す姿を目の当たりにし、「私」は自分がそこに存在したことで誰かを傷つけてしまった事実に激しいショックを受ける。 夜が更け、群れが散っていく中で「私」は思い至る。 恐怖の対象でしかなかった羽虫たちも、ただ必死に生き、本能に従って螺旋を描いていただけなのだと。 体が透明になり消えかける間際、かつての自分のように虫を怖がる人々へ静かな謝罪と理解を願いながら、「私」は静かに意識を手放す。 翌朝、自宅のベッドで目を覚ました「私」すべては夢だったのかと疑うが、枕元には一匹の小さな羽虫の姿があった。「私」はその命を潰すことなく、そっと窓から外へと逃がす。 今日も夕暮れの公園には、小さな命たちが空へと舞い上がる。トラウマを乗り越えた「私」は、彼らの短くも愛おしい生に思いを馳せながら、その光景を少し離れた場所から温かく見守っているのだった。

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小説を読もう2026/08/12
  • 現在の作品虫が大嫌いな僕が羽虫に変身した結果、彼らの声が聞こえるようになって街の危機を救う話