あらすじ
すべての生物種の代表が集う、史上初の「世界会議」。人間、そして烏賊・蛸・牛・河馬・蜂など多種多様な生物が一堂に会し、世界の運命を一つに定めようとしていた。語り手(人間)は当初この歴史的瞬間に高揚しつつも、内心では他の生物種への差別意識を隠せずにいる。
会議が始まると、動物たちは次々と人間の残虐性・環境破壊・偽善を糾弾し始める。当初は冷静を装っていた語り手も次第に苛立ちを募らせ、人間派と家畜派に分かれた場は日本蜜蜂と大雀蜂の乱闘を皮切りに、議論から暴力へと崩壊する。議長ノアによって会議は中断され、語り手は一人議場を後にする。控室では人間たちが早くも責任のなすり合いを始めており、語り手はそこから逃げるように「花の部屋」へ向かうが、そこにいたのも結局は人間だった――自分もまた、逃れられない人間の一人であることを思い知る。
会議は第二部に入り、冷戦さながらの対立構造の中で再開される。語り手はヴィーガンと肉食主義者の議論に代表されるような「立場が違えば決して交わらない正義」について冷笑的に考察する。やがて家畜の代表「スス・ドメスティクス(豚)」が、数千年にわたり人間に食われ続けてきた家畜にも自由が保障されるべきだと訴え、それに対し英国人代表が「監視下での自由」という欺瞞的な反論を返す。豚の痛烈な一言でその場は凍りつく。
会議の行方は語られないまま、語り手は全生物に共通する本質――傲慢さ、怠惰さ、そして合理的であろうとする性質――を見出す。そのうえで、それでも「頑張ろうとする」すべての生物の姿に、語り手はかすかな哀憐と共感を覚えながら物語は幕を閉じる。