あらすじ
――なんてことなの。
デイダは戦慄した。完璧な給仕、完璧な掃除、完璧なメイドとして主人に仕えることを己の矜持とし、それを至上の喜びとしてきたというのに、この失態。
この家に足を踏み入れて以来、一切の不備を生じさせることなく主人に奉仕し続けてきた彼女にとって、これほど痛烈な屈辱を味わったことはなかった。
デイダの視線の先――よりにもよって主人愛用の革張りの朱色のソファ。その背もたれに一匹の黒く小さな侵入者が鎮座していたのである。
不快害虫。生きた化石。吐瀉物を啜る下等生物。その名は――ゴキブリ。