あらすじ

「僕は、見られている。」  中三の頃、クラスのいじめ動画に「笑っている」ように切り取られて映り込んだ一ノ瀬湊は、その瞬間から人生を失った。動画は拡散し、知らない他人の視線だけが、いつまでも自分を追いかけてくる。転居した今もなお、湊は視線恐怖から「見られない」生活を組み立てている——はずだった。  家の中で、妹・結衣は常にカメラを回している。配信者志望の彼女は「見られる側」へ出ていこうとする。その日、結衣が「ガチのやつ」と言って、一本の廃村動画を湊の視界へ押し込んだ。 朽ちた民俗学資料にしか残っていないはずの土地、「目貸村」。  祠の闇に封じられた神は盲いており、世界を測るために人の目を借りる。見た者は片目に「印」を刻まれ、その中で最も多くの視線が同時に集まった一人が、両眼を奪われる「目代」となる——。  波多野ケイによる現地生配信、民俗学専攻の各務玲奈と祖母トキの証言、そしてネット社会の拡散が、失われた因習「オクリメ」を現代に呼び戻す。  怪異は、ホラー配信の再生ボタンから始まる。 画面の向こうで誰かが目を貸し、画面のこちらであなたもまた、視線を重ねる。見なければ、何も起きない。だが一度でも「見て」しまった目は、もう神の所有物だ。  これは、視線恐怖を抱えた青年が、自分の過去と世界中の視線を引き受けて、「見ないでください」と言いながら神に両目を差し出すまでの物語。  冒頭の一行は「僕は、見られている。」  最後の一行は「僕は、見ている。」  語り手がいつ反転したかに気づいたとき、あなたはもう、この物語から目を逸らせない。

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カクヨム
カクヨム2026/08/11
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