あらすじ
大学の講義が休講になった午後、暇つぶしで入った美術館。
そこで出会ったのは、館で働く真紀さんと、版画を研究する大学院生の奈緒さんだった。
海の絵が気になるから。
版画が少し分かるようになってきたから。
そんな理由をつけながら、僕は毎日のように美術館へ通う。
けれど本当は、もう分かっていたのかもしれない。
受付に誰がいるのか気になって、名前を呼ばれただけで嬉しくなって、三人で過ごした時間ばかりを帰り道に思い出す。
奈緒さんも。
真紀さんも。
たぶん僕も。
何も気づいていないふりをしていただけだった。
三人でいるのが好きだった。
だから、誰か一人を選ぶことができなかった。
そして、選ばないままでいれば何も壊れないと思っていた。
そんなわけ、なかったのに。
誰も悪くなかった。それでも、三人ではいられなかった。
恋になる前の午後を、終わらせられなかった三人の物語。