あらすじ
〈新横濱〉は、かつて海だった場所を埋め立てて造られた都市だ。
環境対策が画餅に帰した21世紀を経て、海面は上昇し続け、都市は沈みかけながらも拡張を続けた。
その結果、海側の再生区画はスラム化し、浮浪貧民が押し込められ、違法AIや環境破壊装置が密造される“都市の影”となった。
旧横浜には特権階級が住み、境界にはガーディアンが立ち、
一般庶民でさえ、浮浪貧民を不満のはけ口にするほど格差は深い。
そんな都市で、十四歳の少女ミナトは、
“無貌”の電子精霊──スケーラブルAIの出力部であるバディと共に、
環境観測という名の“前哨行動”を続けている。
彼女だけがバディの声を聞ける理由は、
身体能力、判断力、冷静さ、瞬発力──
そして、天涯孤独であるという“社会的束縛のなさ”をAIが選んだからだ。
だが、都市の闇は、彼女たちの想像を超えて蠢いている。
暴力肯定社会変革主義者の緩やかな連合体「混沌(ヴェノム)」。
この世の不条理を破壊し尽くしてリセットを試みる狂気の集団「饕餮」。
彼らは組織ですらない。
都市の病理が生んだ“集合的衝動”であり、
頭を潰しても、すぐに別の場所で再生する。
ミナトと無貌のバディは、
その“再生する闇”の最初の兆候と遭遇する。
これは、少女と形なき知性が、
壊れゆく世界の中で“未来を選び取る”物語。